従業員の方を雇い入れる時に就業規則を作成するメリット(続)

-
こんにちは!すばるアライアンスメンバーの「経営者と従業員の架け橋」社会保険労務士の神藤です。
いつもご購読ありがとうございます。
前回のメールマガジンでは、従業員の方を雇い入れる時に就業規則を作成するメリットが5つあることを書かせていただきました。
-
その5つのメリットについては次のとおりです。

【従業員の方を雇い入れる時に就業規則を作成するメリット】
1、会社(事業主)を問題社員から守ることができる。
2、経営者が労働基準法などの労働法について、最低限守らないといけないこと(内容を含めて)を認識することができる。
3、経営者が従業員の労働条件(労働時間や給料など)を具体的にどのようにするか考えるきっかけになる。
4、ルールが明確にされているため、これから働く従業員が安心して働くことができる。
5、雇用関係助成金の申請をすることが容易になる。

今回は、従業員の方を雇い入れる時に就業規則を作成するメリット5つについて1つずつ具体的にご紹介させていただきます。今回はちょっと長いですよ(笑)
-
【メリット1、会社(事業主)を問題社員から守ることができる。】
就業規則は、なんでもかんでも自由に作成できるわけではなく、労働基準法により一定のルールが定められております。
その1つとして、就業規則には、必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)と定める場合には記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)があります。
-
絶対的必要記載事項で記載しなければならいない事項とは、次の事項です。

① 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項
② 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
③ 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

-
相対的必要記載事項として、定める場合には記載しなければならない事項とは、次のような事項です。

① 退職手当に関する事項
② 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
③ 食費、作業用品などの負担に関する事項
④ 安全衛生に関する事項
⑤ 職業訓練に関する事項
⑥ 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
⑦ 表彰、制裁に関する事項
⑧ その他全労働者に適用される事項

絶対的必要記載事項は、労働時間、給料、退職(解雇)に関するもので、従業員の方の労働条件に深くかかわる事項です。
絶対的必要記載事項ですので、有給休暇を取らせたくないなどの理由で有給休暇に関する事項について記載しないということはできません。
また、記載した内容は、労働基準法を下回る労働条件(有給休暇を法定よりも少なく付与するなど)を定めることはできません。
-
会社(事業主)を問題社員から守るためには、絶対的必要記載事項については「退職に関する事項(解雇の事由を含む。)」、相対的必要記載事項については「表彰、制裁に関する事項」をキチンと定めておくことが重要になります。
例えば、次のような従業員がいた場合、就業規則に制裁に関して定めていない場合どうなるでしょうか?

1.遅刻を繰り返す(毎月3回程度)従業員
就業規則で何も定めていない場合は、制裁としての減給はできません。
ただし、働いていない時間分の給料減額はできます。(ノーワークノーペイの原則)

2.セクハラを繰り返す従業員
就業規則で何も定めていない場合は、制裁を科すことができません。
会社都合で解雇することはできるでしょうけども、会社都合で解雇をする場合は雇用関係助成金が一定期間受給できない等不利益を受けます。

上記のように就業規則に問題社員に対する解雇事由と制裁(懲戒)に関するものは定めておかないと制裁を科すことができないため、定めておくことが重要です。定める例は次のような感じです。

〔懲戒〕
第1条(懲戒の種類および程度)
懲戒は、次の区分に従って行う。
(1)けん責
始末書をとり、将来を戒める。
(2)減給
始末書をとり、将来を戒めるとともに賃金を減ずる。
この場合、減給の額は一事案について平均賃金の1日分の半額とし、複数事案に対しては減給総額が当該賃金支払い期間における賃金金額の10分の1を超えないものとする。
(3)~(5)省略
(6)諭旨解雇
退職願を提出するように勧告する。ただし、所定期間内に勧告に従わないときは懲戒解雇とする。諭旨解雇となる者には、情状を勘案して退職金の一部を支給しないことがある。
(7)懲戒解雇
予告期間を設けることなく即時解雇する。この場合、所轄労働基準監督署長の認定を受けた時は、第◯条に定める解雇予告手当を支給しない。
懲戒解雇となる者には、退職金を支給しない。
-
第2条(懲戒事由)
従業員が次の各号の一に該当するときは、審議のうえ、その軽重に応じ、第1条に定める懲戒処分を行う。
(1)省略
(2)正当な理由なく、しばしば遅刻、早退し、あるいはみだりに任務を離れるなど誠実に勤務しないとき
(3)~(13)省略
(14)性的言動により、他の労働者に不快な思いをさせ、職場の環境を悪くしたとき
(15)以後省略

このように定めておくことによって、従業員がどのような事をした場合に、どのような制裁が科されるかを明確になり、問題を起こすことに対する抑止になります。
また、諭旨解雇と懲戒解雇は一発退場なので当てはまりませんが、問題を起こした場合に懲戒処分により本人に改善の機会を与え、今後の再発を防止するという教育的機能もあります。
遅刻を繰り返す従業員には、「けん責」で注意して改善を促し再発を防止することや「減給」により制裁を科すことができるようになります。
セクハラを繰り返す従業員には程度がひどい場合は、「懲戒解雇」で一発退場してもらうことができるようになります。
-
会社を問題社員から守るためには就業規則を作成することが重要ということがお分かりになりましたか?
-
次回は、就業規則を作成するメリット、その2「経営者が労働基準法などの労働法について、最低限守らないといけないこと(内容を含めて)を認識することができる。」をご紹介させていただきたいと思います。
-
今回もお読みいただきましてありがとうございました!
-
すばるプロフェッションズ
社会保険労務士 神藤 茂