社会保険労務士 神藤 茂

こんにちは!
すばるアライアンスメンバーの「経営者と従業員の架け橋」社会保険労務士の神藤です。

9月に入って朝晩は少しずつ涼しくなってきていますが、まだ暑い日が続いていますね。
みなさま、熱中症にご注意ください。

新型コロナウイルスについては、8月のはじめをピークに徐々に新たな感染者数が減ってきています。重症者数、死亡者数も少ない人数で落ち着いています。

感染した場合の身体への影響よりも、周りへの影響(仕事場や学校の休業、自粛警察による誹謗中傷、差別など)の方が大きいので、引き続きマスクの着用、手洗いや手指の消毒などの感染防止対策も続けていきましょう!

さて、今回は、新型コロナウイルスの感染が疑われる従業員を雇用している方から相談を受けた実際の事例について書かせていただきます。

 

【事例1】新型コロナウイルスに感染(後日感染が判明)した友人と食事を共にした従業員から「一緒に食事をした友人が新型コロナウイルスに感染していた」という報告を受けた。

相談者である経営者(以下「経営者」といいます)は、医療関係の事業を営んでおり、感染防止対策として当該従業員を2週間自宅待機させました。

1.相談内容
「従業員を自宅待機にした2週間の給料計算はどう処理したら良いか?」

2.検討方法
(給料計算の対象となる)自宅待機した2週間の勤怠について、どのように処理すべきかですが、次の検討をする必要があります。

◆「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たるかどうか?
経営者は、医療関係の事業を営んでおり、新型コロナウイルスへの感染には特に注意しなければならない立場から、感染リスクがある従業員に対して2週間の自宅待機を命じたのは慎重かつ賢明な判断だと思われます。

この自宅待機2週間の給料計算について、「欠勤」として2週間(のうち勤務日数)分の給料を差し引くことができるかの判断については、当該自宅待機2週間が『「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たるかどうか?』を検討する必要があります。

もしも「使用者の責に帰すべき事由による休業」である場合は、当該自宅待機2週間のうち、勤務日にあたる日である「休業日」については、労働基準法第26条に定められている「平均賃金の60%以上の休業手当」の支払いが必要になります。

事例1の場合はどうなのでしょうか?
自宅待機前の当該従業員は、発熱や咳など新型コロナウイルスに感染したような自覚症状がない状況ということでした。つまり、労務提供ができない状態ではなかったと言えます。

このような場合には、厚生労働省のホームページ『新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)』にも記載がありますが、『職務の継続が可能である場合で、使用者の自主判断で従業員を休業させる場合には、一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。』

3.実際に行った対応
経営者は、自宅待機2週間のうち当該従業員の勤務日については「(使用者の責に帰すべき事由による)休業」として、休業日1日につき、(減額はせず)1日分の給料を休業手当として支払いました。なお、当該経営者は、雇用調整助成金を使って当該従業員の休業手当の補填を行いました。

 

【事例2】発熱をしていて働くことができない状態であり、新型コロナウイルスの感染が疑われる従業員を2週間自宅待機させました。

事例1と同じ経営者からの相談です。相談内容も同じです。

1.相談内容
「従業員を自宅待機にした2週間の給料計算はどう処理したら良いか?」

2.検討方法
(給料計算の対象となる)自宅待機した2週間の勤怠について、どのように処理すべきかですが、次の検討をする必要があります。

◆発熱症状がある間「労務提供ができる状況」にあるかどうか?
事例1と違う点としては、当該従業員は発熱しており、通常の労務提供ができない状態にあります。つまり、発熱していて労務提供ができない状態にある間は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」とは言えないと判断することができますので、その間の給料計算については「欠勤」として欠勤日数分の給料を差し引くことができると考えます。
なお、新型コロナウイルスに感染しておらず、自宅待機2週間の間に、発熱が収まり通常の勤務ができる状態になった後の勤務日については、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たると考えられるため、休業手当の支払いが必要になると考えられます。

厚生労働省のホームページ『新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)』によると、『発熱などの症状があることのみをもって一律に労働者に休んでいただく措置をとる場合のように、使用者の自主的な判断で休業させる場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。』と記載されています。

『労務提供ができるかどうか』が「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまるかどうかの判断基準になると言えそうです。

3.実際に行った対応

当該従業員には、年次有給休暇が付与されているため、欠勤にあたる日は従業員本人の希望により年次有給休暇に振り替えて給料計算を行うことになりました。

 

参考資料[厚生労働省のホームページ『新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)』]
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html

今回は私の顧問先経営者からの相談事例を書かせていただきました。
これからも新型コロナウイルスへの感染が疑われる事例が皆様の周りでも起こる可能性は十分あります。

どのように対応したら良いかのヒントにしていただければ幸いです。

ご購読ありがとうございました!

すばるプロフェッションズ
社会保険労務士 神藤 茂