すばるプロフェッションズ・アライアンスメンバー、司法書士の中村 剛です。

司法書士は、法律と登記をとおして財産と権利を護る仕事をしています。
具体的には、不動産登記や会社・法人の登記手続き、裁判所への書類作成などをサポートします。

司法書士に加えて、不動産の表示登記の専門家である土地家屋調査士、不動産に詳しくなるため宅建など不動産の資格や、ファイナンシャル・プランナーも取得して、多角的にお客様の問題を解決しています。

今日は、自筆の遺言についてお話をさせて頂きます。

将来、自筆の遺言書を法務局で保管してくれる制度がつくられようとしています。
法務局というのは、登記所ともいい、不動産登記や商業登記の登記簿を取り扱っている役所のことです。

一般的な遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言と3種類あります。自筆証書遺言は手軽に書くことができるため一般的に利用されていますが、反面、紛失のおそれや偽造のおそれがあります。
また、全文や日付を必ず本人が書き、署名押印が必要のため、遺言者が亡くなった後に効力がないことがわかる場合もあります。

公正証書遺言とは、公証役場で公証人と協力のうえ作成され、保管もしてもらえ、紛失や偽造のおそれがなく、執行手続きも簡単なため、多く利用されています。

秘密証書遺言とは、あらかじめ準備した遺言書を公証役場にもっていき、遺言書を作成したという記録を保管してもらい、遺言書自体は本人が保管する遺言書のことで、あまり利用されていません。

改正が予定されているのは、紛失のおそれのある自筆証書遺言になります。

自筆証書遺言は自ら保管するのが一般的で、死後、発見されない場合や隠されたりする場合もあります。

改正案では、公的機関である法務局で自筆証書遺言を保管できるようになります。
法務局で保管されるということは、紛失のおそれがないだけでなく、相続人が、遺言者の死後に法務局で遺言の有無を確認することが可能になります。
現在は、公正証書遺言については公証役場で検索できますが、あわせて法務局でも検索するようになりそうです。

単に保管するのでなく、封をしていない遺言を提出して、形式的に問題ないかまでチェックしてくれます。
不備があれば法務局側が指摘してくれることになります。

相続人や受遺者は、法務局に対して遺言書の閲覧を請求することもできます。

さらに、電子化されるため遺言書の画像情報を証明した書面の交付もできるようになります。

遺言者の生存中は、相続人から請求できないのは、公証役場での検索と同様です。

しかも、法務局で保管される自筆証書遺言については、家庭裁判所の「検認」手続きが不要になります。
家庭裁判所に戸籍などをすべて揃えて提出し、裁判官の立ち合いのもと開封する面倒で大変な手続きをしなくてもよいことになります。

また、これまでは全文を自ら手書きによらなければいけなかったのですが、不動産や銀行口座などを記載する財産目録については、パソコンで作成したものでも大丈夫になります。
不動産がたくさんある場合は煩雑で大変でしたので、かなり省力化できるようになります。

この制度が運用されるようになれば、遺言書の紛失や偽造、隠ぺいを防ぐことができるようになり、自筆証書遺言の利用が促進されることが期待されています。

ただ、法務局に保管してもらう場合は有料となる見通しで金額については検討中となっています。

公的機関である法務局で保管できれば、利便性が高まって、所有者不明の土地や空き家問題の解消につながることも期待されています。

この改正案は、平成30年3月に閣議決定されました。
国会で成立すれば、相続分野の見直しは40年ぶりのことになります。

ただし、実際に施行されるのは、数年先になり、まだまだ時間がかかりそうです。

最後まで読んで頂きましてありがとうございました。


すばるプロフェッションズ

登記コンサルタント・司法書士 中村 剛