こんにちは。
すばるプロフェッションズのアライアンスメンバー、弁護士の鈴木康晃です。

今回は,交通事故に関する話題はいったんお休みし,裁判手続きを大きく変えることになる方針を政府が固めましたので,そのことについて触れたいと思います。
2月21日付読売新聞の記事を以下でご紹介します。

政府は,民事裁判手続きのIT(情報技術)化を進めるため,これまで紙媒体での提出,審理を原則としてきた民事裁判の訴状や準備書面等などの記録をすべて電子化する方針を固めた。
裁判所がインターネット上に新設する専用サイトにアクセスして訴状や準備書面を提出することが出来るようになり,利便性の向上やペーパーレス化が期待されている。
政府は昨年6月に閣議決定した「未来投資戦略」で,裁判手続きのIT化を盛り込み,有識者会議で検討を進めていた。
有識者会議が近く提言をまとめるのを受け,政府は法改正やシステムの構築に入る。
早ければ2020年度の導入を目指す方針だ。
民事訴訟法は,「口頭弁論は,書面で準備しなければならない」(161条)と定め,訴状や準備書面,証拠書類等などは原則,紙で作成するよう義務付けていた。
裁判所に提出する場合も,持参または郵送,ファクスで送ることが求められ,印刷や持参,送付の手間と費用,書類の保管場所の確保など多くの課題が指摘されていた。

この記事にあるように,従来は紙媒体のやり取りをするという非常に前時代的な方法が採用されてきました。
ファクスで準備書面などを提出することが多いですが,ファクスを実務に使用しているのは諸外国を見てももはや日本くらいしかないそうです。
印刷や持参,送付の手間等が省けるようになるので,この新制度が始まると非常に負担が減ると予想されます。
また,裁判記録が電子化するので,公開される判決も増えることが期待されます。
判決の公開は,国民に予測可能性を与えるためにも非常に重要なテーマです。

ただ,課題も多そうです。
まずはセキュリティの問題が挙げられます。
裁判記録は個人情報が多く記載されていますので人為的ミスや外部からの攻撃等による情報漏洩が心配されます。
裁判での期日も電子化され,インターネットの送受信を通じて開廷できるようになると,遠い裁判所までの移動にかかる時間的・経済的コストがかからなくなる反面,憲法82条1項では
「裁判の対審及び判決は,公開法廷でこれを行う」と定められており,裁判の傍聴をどのように実現するのかという課題もあります。

ともあれ,裁判手続きのIT化,電子化は避けられないでしょうから,問題点にしっかりと配慮しながら進めていってほしいものです。

すばるプロフェッションズ

弁護士 鈴木 康晃